だれにも話さなかった祖父のこと
2015年08月25日
マイケル・モーパーゴ 文、ジェマ・オチャラハン 絵、片岡しのぶ 訳
/あすなろ社
~人としての尊厳を考える~
しゃれこうべを、よれよれで傷だらけの皮膚でくるんだような顔。片手は三本の指が半分しかなく、もう片方は親指だけ。それが、マイケルの祖父の姿でした。祖父は、マイケルが学校を出た夏休みに、自分がそのような姿になったわけをマイケルに話してくれます。
乗っていた船が魚雷により沈没したこと、幼なじみの死、顔をはじめとした傷の手術、妻との別れと娘との再会。祖父の顔を恐れず、その奥にある表情を分かってくれるマイケルと祖父の穏やかなやり取りが、祖父の過去の凄惨さを和らげてくれます。
たとえどのような姿でも「自分は化け物などではなく、れっきとした人間だ」ということを、祖父の生き方や思いを通じて訴えかけてくる作品です。
(島根日日新聞8月24日掲載)