権力の空間/空間の権力
2015年08月25日
山本理顕 著/講談社
~都市の中の家に住まう~
家に帰って鍵をかけると、そこは開放的なプライベート空間です。しかし視点を広げて外側から見ると、そこは外界から閉ざされた小さな隔離部屋かも...? 現代の住宅建築の始まりは、二月革命をきっかけとした労働者住宅だとされます。それは、革命(集団の力)を恐れた資本家による、監視システムとしての建築でした。周囲から切り離されてパッケージ化された住宅は、消費社会の象徴です。
縁側に隣近所の人が腰掛けて小話、などといった光景は見かけなくなりました。今、外との「つながり」が再認識されています。ハンナ・アレント著『人間の条件』を読み解きながら、古代ギリシアの誰にも平等に開かれた場所「ノー・マンズ・ランド」を思い、私たちの暮らしをふり返ってみませんか。
(島根日日新聞7月27日掲載)