サリンジャー

2015年08月25日

所蔵情報

デイヴィッド・シールズ著、シェーン・サレルノ 著

(坪野圭介 訳、樋口武志訳)/KADOKAWA

~サリンジャーの人物に触れる~

謎多き作家サリンジャー。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が大ヒットして以降、世間から遠ざかっていき、小説を発表することもやめ、隠遁生活を送るようになっていった彼は、どんな人物だったのだろう? 本書の試みは、二百人以上の関係者へのインタビューやサリンジャーが残した手紙などを通して、彼の人物像を探ろうというものだ。

 優秀な作家になることを猛烈に望んでいた青年時代、志願して出兵したものの精神に深い傷を負う結果に終わった第二次大戦、PTSDを患いながら書いたいくつかの小説とそれらの成功、救いを求めてのめり込んでいった宗教。

 本書が提示する生々しい証言は、読者の想像力を刺激し、まるでサリンジャーという人物がすぐ隣にいるような錯覚すら与えてくれる。

(島根日日新聞8月3掲載)