葬送の仕事師たち

2015年12月05日

所蔵情報

井上理津子著/新潮社

 ~死の現場から語る~

 「人は死ぬと肉体がなくなる。しかし、遺族の心に亡くなった人は生き続け、強く生きてくれというエネルギーに守られて生きていくんだ」この言葉は、本書で紹介されている葬儀業者で、葬儀の専門学校の理事長が語っている言葉です。
 死の現場に立ち会い、最期の別れをすることが何より重要であり、別れの儀式の大切さを述べています。現在、葬儀の内容、形式も変化してきています。昔は家族、地域で行われていた葬儀は、現在は葬儀のプロによって亡くなった人の清拭、湯灌(ゆかん)、納棺、顔の復元等がされ、希望に応じて死者との別れの形も選べます。
 本書は、死者のケアから火葬、お葬式に至るまでの葬儀のプロ達の仕事の裏舞台、思い、そして、この仕事を選んだ理由にもふれる取材記録です。生きていることのありがたさ、いつか訪れる死について、死にゆくこと、遺されること、様々な人間の最期の儀式について考えさせる一冊です。

(島根日日新聞11月23日掲載)