そらいろ男爵

2016年03月21日

所蔵情報

ジル・ボム 文,ティエリー・デデュー 絵,中島さおり 訳/主婦の友社

 ~戦争がなくなる?~

 戦闘機が空から落としたものは、爆弾ではなく書籍だった。こんなことを一体だれが思いつくでしょうか。実は、落ちてきたのは重くて当たったらガツーンと痛いぶあつい辞書だったのですから。どんどん落としたせいで、本の砲弾はたちまち底をついてしまいます。
 主人公の男爵は、ついにお気に入りの本まで砲弾代わりに敵軍に落としてしまいます。さて、落とされた側はどうなるか。そこが本作のねらいでしょうが、意外な結末に読者は快哉とばかり手を打つことでしょう。
 100年前の設定の話とはいえ、夢物語でおしまいにするにはちょっともったいない話です。
 ベテラン絵本作家ティエリー・デデューのふしぎな挿絵の表現とあいまって、読者に戦争の愚かさを強く訴えてきます。

(島根日日新聞3月21日掲載)