岬のマヨイガ

2016年05月05日

所蔵情報

柏葉幸子 著、さいとうゆきこ 絵/講談社

 ~心の中の誰かと向き合う物語~

 顔も知らない伯父の家に引き取られるはずだった萌花。暴力をふるう夫から逃げてきたゆりえ。奇妙な縁から、二人は「ひより」「結」と名前を変え、過去を隠し、遠野出身のキワおばあちゃんと東日本大震災後の岩手・狐崎で暮らし始めます。
 ひよりにも結にも、震災で深い傷を負った狐崎の人々にも、それぞれ心の中で気にかける人がいました。普段は心に鍵をかけて閉じ込め、見ないようにしている人とどう向き合うかが、この物語のテーマです。キワおばあちゃんやおばあちゃんの不思議な友人との出会いによって、ひよりたちが少しずつ前を向く力を取り戻していく姿は、読んでいる方も応援したくなります。
 あやかしや不思議が好きな人、暖かいファンタジーが好きな人に、おすすめの一冊です。

(島根日日新聞4月25日掲載)