レモンの図書室(ジュニア)

2018年09月02日

所蔵情報

ジョー・コットリル 著 杉田七重 訳/小学館

 ~想像力と友情を力にして~

10歳の少女カリプソは、5年前に母親を亡くして以来、父親と二人だけで暮らしています。人を遠ざけ娘の世話もしないで、レモンの研究に没頭する父親と、本だけを心の拠り所にして誰とも交わろうとしないカリプソ。生活が一変したのは、本の好きな転入生メイと出会い、人と関わることの喜びを知ったからでした。ある日メイを自宅に招き父親の書斎に入ると、書棚には本は一冊もなくなっていて、レモンの果実で埋め尽くされていました。何故こんなことになったのでしょう。訳者のあとがきによれば、レモンは「欧米では欠陥品という意味や困難の象徴とされることもある」そうです。親の世話をする健気な子どもの姿を描いたこの作品は現代社会の一面を伝えていて、前向きに生きるカリプソの姿は読者に勇気と希望を与えてくれるでしょう。

(島根日日新聞 2018年8月6日掲載)