図書館巡礼(一般)

2019年10月13日

所蔵情報

スチュアート・ケルズ/早川書房

 ~美と驚異に満ちた図書館~

 著者は、最良の図書館とは、「たんに書物が集まる場であることをはるかに超えた、文明の拠点であり機関である。」と述べます。一方で、図書館は、「入力と出力と成果を対象とした新自由主義に基づく枠組みにはおさまらない。」と言い、現代社会では、その枠組みで動く公的資金の使い道が、図書館の経費締め付けにつながっていると憂えています。
 デジタル化の保存技術やインターネットの可能性にも触れながら、本のない口誦(くちずさむこと)伝承の図書館、パピルスや骨、樹皮など様々な素材で作られた書物を備えた図書館、大聖堂や修道院の図書館、壮麗な図書館建築、戦争や火事による書物の破壊、略奪などを語ります。
 読後、本の手ざわりや図書館の温もりを求めてしまう1冊です。 

(島根日日新聞2019年7月29日掲載)