炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火(一般)
2020年07月04日
スーザン・オーリアン:著 羽田 詩津子:訳/早川書房
~図書館が燃えるということ~
1986年4月29日、ロサンゼルス中央図書館で大規模な火災が発生しました。
チェルノブイリ原発事故とほとんど同時に起こったために、国際的な報道が少なかった事件ですが、40万冊の本が焼失し、70万冊の本が煙や水によって損傷するなど、その被害は甚大でした。ハリー・ピークという虚言癖のある青年が放火の容疑で逮捕されますが、彼は後に証拠不十分で釈放されます。
本書はこの事件の顛末を描いたノンフィクションですが、事件の前後だけでなく、ロサンゼルスの図書館やそこで働く人々が歩んできた長い歴史についても、詳細に語っています。そうすることによって、図書館や本が焼かれたことの痛ましさが、くっきりと浮かび上がり、読者に伝わってくるのです。
(島根日日新聞2020年6月29日掲載)