人事の三国志(一般)

2020年07月03日

所蔵情報

渡邉 義浩/朝日新聞出版社

 ~三国志の裏側をのぞき見る~

 人形劇や漫画、ゲーム、小説、また歴史の教科書でも「三国志」は日本人にずいぶんなじみの深いものですね。
 文学的な視点ではなく、当時の官吏制度などの歴史的視点、師弟関係や地縁などの文化的視点から三国志を解説した本です。たとえば劉備が諸葛亮を迎えた「三顧の礼」は、その能力を見込んで丁重に礼を尽くしたという感動話ではなく、当時の登用制度において必須の儀式だった...など。魏・蜀・呉それぞれの人材活用から、政権運営の思惑を分析しています。儒教社会のしがらみから、全く新たな価値基準を創造しようとした魏の方針には感心しました。いつの時代も旧勢力と新勢力は、さまざまにぶつかり合うのが人間の歴史です。
 日中文化交流協定締結40周年を記念し、三国志の展覧会も開かれています。久しぶりに、三国志の世界にはまってみませんか。

(島根日日新聞2019年12月2日掲載)