希望の図書館(児童)
2020年07月07日
リサ・クライン・ランサム:作 松浦 直美:訳/ポプラ社
~名前と本がくれた「希望」~
母を病気で亡くしたラングストンは、父と二人きりでシカゴに引っ越してきました。学校では友達もできず、授業が終わると一目散に、誰も待っていない家に帰るのです。ある日、いじめっ子から逃げ出した先で、偶然、図書館にたどりつきます。人種差別が残る時代でしたが、シカゴ図書館はだれにでも本を貸してくれたのです。ラングストンは自分と同じ「ラングストン」という名の黒人詩人の本を見つけます。読書は、冷たく感じられていた都会での生活に、故郷の温かさを思い出させてくれました。ラングストンは、前を向いて歩き始めます。
少年と本の世界をつないだのは、母から贈られたその名前でした。母の愛から1冊の本へ、そして未来が広がっていく高揚感に、人の強さを感じる児童小説です。
(島根日日新聞2020年7月6日掲載)