雷のあとに(児童)
2020年10月02日
中山聖子:著 岡本よしろう:絵/文研出版
~大人への一歩を踏み出すとき~
小学五年生の秋、睦子は誰もいない伯父の家に行き、一人で過ごすことが増えた。大好きな伯父さんは半年前に病気で亡くなった。どこまでも高い水色の空を見上げていても、睦子の心は憂鬱だ。地味な名前が嫌だ。睦子を「真面目でいい子」のままでいさせようとする母親が面倒くさい。親友が転校生と仲良くなり、休み時間も登下校もひとりぼっちになった。
憂鬱の度合いは秋から冬にかけても増していくのですが、春の兆しとされる雷のあと、睦子は劣等感や閉塞感から解放されます。その足がかりになっていたのは、「真面目」の意味を辞書で調べたこと、そして伯父さんの素敵な言葉を思い出したことでした。少女の成長をぜひストーリーの流れの中で味わってみてください。
(島根日日新聞2020年8月3日掲載)