東京裏返し 社会学的街歩きガイド(一般)
2020年10月20日
吉見俊哉/集英社
~スローダウンの都市論~
著者は、メディア論、都市論を専門とする著名な社会学者、吉見俊哉氏。都電荒川線、上野、浅草、神田など都心北部7日間の街歩きから、都市に積層する時間を意識した東京再生を提案します。
例えば上野では、旧博物館動物園駅舎や上野戦争碑、旧寛永寺五重塔などの遺物を前に、路上講義が繰り広げられます。入り江の名残である不忍池、江戸時代隆盛を誇った東叡山寛永寺、近代化のシンボルとしての博物館、図書館、動物園等の建設、大戦後文化の中心からの周縁化などが、目に見えるかのように解説されます。
20世紀に生産性とスピードを追求しきった東京に、徒歩、自転車、路面電車、船といった多様な交通手段の組み合わせによって、都市生活の快適さを取り戻す構想が本書の主眼です。
(島根日日新聞2020年10月19日掲載)