沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝(一般)
2021年01月12日
細田 昌志/新潮社
~昭和のプロモーターの栄光と転落~
本書はキックボクシングの創始者として知られるプロモーター・野口修の実像に追ったノンフィクションです。
プロボクサーで右翼団体の構成員でもあった父・野口進の長男として生まれた彼は、父譲りの人脈や才能を活かして格闘興業の世界に飛び込みます。タイ式ボクシングと空手の交流試合のために作られた新たな格闘技に「キックボクシング」と名前をつけ、沢村忠を看板選手に据えて大ブームを巻き起こしました。五木ひろしをプロデュースするなど芸能界でも成功をおさめますが、やがて事業に失敗し破産することとなります。
綿密な取材をもとに描かれる野口修の生涯は、エネルギッシュであると同時に、一度頂点を極めた人間が転落していく、そんな盛者必衰の悲哀も感じさせます。
(島根日日新聞2021年1月11日掲載)