教科書御用達小説の主人公はクズでヘタレばかり (一般)

2021年06月11日

所蔵情報

佐藤 功/河出書房新社

 ~純文学を読み直そう~

 高校の国語の教科書に掲載されている文学作品を掲載数の多い順に第一位から第五位まで並べると、「羅生門」「山月記」「こころ」「舞姫」「檸檬」となっているそうです。著者はこれらの文学作品の主人公の共通点を、クズやヘタレばかりだと紹介しています。確かに、老婆から着物をはぎ取って逃げたり、友人や妻を裏切ったり、借金をかかえていたりと、品行方正な主人公は出てきません。なぜ教科書はこれらの作品を載せているのか。その答えを著者はワクチンに例えています。人生の中で何かつらい出来事に遭遇したとき、これは「羅生門」の下人と同じ状況だと気づく、疑似体験により自分の中に抗体ができる、と。
 この本と一緒に高校時代に学んだ純文学を読み返してみませんか。
 

(島根日日新聞2021年6月7日掲載)