米澤 穂信／文藝春秋

～ハマる！ミステリ沼～

　1月に『黒牢城』で第166回直木賞を受賞した米澤穂信氏による、読書エッセイ集です。作家生活20年の間に書いてきた本にまつわる文章、対談などが収録されています。紹介されている作品（主にミステリ）の数は巻末の索引が10ページになるほどで、その読書量とミステリへの熱量に圧倒されます。著者がどんな作品の影響を受けているのかがわかるとともに、古今東西のミステリガイドとしても楽しめる一冊です。
　ミステリは知と理の文芸でありながら、心に刺さる物語の魅力もあると著者はいいます。本書を読めば、普段ミステリを手にとらない方でも読んでみたくなるのではないでしょうか。物語の世界に没頭し、読後に「ああ面白かった」と顔を上げる...。そんな体験をぜひミステリで！

（島根日日新聞２０２２年４月４日掲載）