ペルーから来た私の娘(一般)
2024年11月08日
藤本和子/晶文社
~今こそ読みたい、傑作エッセイの復刊~
リチャード・ブローディガンやトニ・モリスンらの翻訳を手がけ、聞き書きの名手でもある藤本和子氏による1984年出版のエッセイ集が復刊しました。
表題作では、ユダヤ人の夫とともに養子を迎えにペルーへ行った藤本さんが、養い親と認められ、ペルーを経つまでの8週間、生まれたばかりの子と過ごす"天国からの贈り物"のような日々を綴っています。このほか、精神病院に60年入院している口を利かないオキヤマさん、高潔な人格とすばらしい技術を持つペンキ屋のアイリーンなど、アメリカの町々で暮らすなかで出会った人々を描いています。
やわらかい筆致のなかに、その人の背景にある悲しみや苦しみに真摯に向き合う藤本さんを感じられ、忘れがたく印象に残るエッセイ集です。
(島根日日新聞2024年11月4日掲載)